
Sound Circles Tool Kit English
サウンドサークル・ガイド
サウンドサークル・ツールキット
アクセスアーツ
サウンドサークルは「コーラスともパフォーマンスとも言い切れません。それは、心と精神と身体が出会う場です。」(Access
Arts Inc販促用チラシより) そして、老若を問わず、心をいきいきと保たせ、楽しませてくれるものなのです。
このツールキットは決まりきったパフォーマンスをするためのステップ・バイ・ステップのマニュアルではありません。これは、皆さんが皆さん自身のサウンドサークルを作り上げていくにあたって役立つようないろいろな材料を、そして、これらの材料を使ってどんなことができるのかをお見せするところから始めます。
この文書はツールキットを集約するものです。キットにはサウンドサークルの秘める可能性をご覧いただくための映像(35分),インタビュー、写真集が入っています。このキットはアクセスアーツ(http://www.accessarts.org.au)が、オーストラリア地域文化開発協議会(Australia
Council's Community Cultural Development Board)とアーツ・クイーンズランド、文化基盤計画(Cultural
Infrastructure Program of Arts Queensland)からの基金を得て、作成したものです。
ツールキットは、各種の活動の意義、成果、そしてサウンドサークルの持つ可能性を示すものです。声と音とパフォーマンスの技能を育てるためにグループでワークショップを行うというこの手法を概観するものであるとともに、サウンドサークルにはさまざまな出発点があるということ、サウンドサークルが教育、企業、地域社会といった幅広い状況で応用できるものであることをお伝えするものです。
映像(the film):2004年9月から2005年3月にかけて、ケアンズ、ナンボア、カブルチャー、ブリスベンで開催されたワークショップと関連イベントの映像の一部を集成したものです。サウンドサークルという手法による音とパフォーマンスのワークショップがどんなに多様で、豊かで、複雑であるかに触れていただけます。
インタビュー(the
Interview):ファシリテーター、コーディネーター、主催者、そして参加者とのインタビューがサウンドサークルという手法への一層の洞察をもたらしてくれるでしょう。そして、個々人がサウンドサークルで辿った旅路や観点をより詳細に見ていくことができるでしょう。
写真集(the Photo Gallery):サウンドサークルと似た手法を使うアートや文化プロジェクトの写真が納められています。これらは全て、障害を持つ人々によって育て上げられたもので、この手法を通じてどんなに幅広い成果が得られるのかをご覧いただけます。
ガイド(the Guide):サウンドサークルに関心を持つ人々や組織にサウンドサークル作りへの足がかりとなる幅広い概念像をご提供します。
ツールキットの使用例
(Suggested Use of the Tool Kit)
- まず、DVDでサウンドサークルの映像とインタビューをご覧ください。あまりなじみのない事柄は関連事項をご参照ください。
- サウンドサークル・ガイドをご一読ください。このガイドの全文はhttp://www.accessarts.org.au/sound_circles_guide.htmに掲載されています。
- あなたのサウンドサークルに必要な役柄を果たせそうな人や組織を心当たりしてみてください。
- いろいろな仲間、アーティスト、そして組織にサウンドサークルのことを話し始めましょう。
- 助言や助けが必要な場合には、サウンドサークルに経験のある個人や組織に連絡を取りましょう。
- サウンドサークルへの支持を得るために、地元や関係者との話し合いを継続的に行いましょう。
- サウンドサークルを始めましょう!上手く行っているのか、また、どのように育て上げていくのか等を常に話し合いましょう。
- そして何より、サウンドサークルを楽しみましょう。
サウンドサークル概観
(Overview of the Sound Circles)
サウンドサークルの基本となるのは、定期的なワークショップです。ここにはサウンドサークルに興味を持った人が参加し、声と音という領域で技能を伸ばし、創造性を育て上げていきます。ワークショップでは公式、非公式を問わず、ある種のパフォーマンスを作り上げることを目指します。また、ワークショップは自己完結型でも、他のイベントと関わり合うものでもいいですし、その過程で他から参加者を招いたりしてもいいのです。
サウンドサークルのグループは同じようなことをして有名になった人の経験ではなく、私達自身の人生経験が創造性という工場の糧になっていくような場を私達にくれるんです。人生の中で、サウンドサークルが芸術的な表現の場として役立っていくということがとても大切なんです。それは、単なる娯楽というにとどまらず、経験と意義を分かち合える場なんです。
アン・バーミンガム(ファシリテーター)
サウンドサークルを立ち上げるためにはさまざまな役柄を果たす人や組織が協働していくことが大切です。関係者による事前会議で、人々の関心が充分に集まっているかどうか、案を実行に移すのに必要な資源があるのかどうか等を確かめていくことが大切です。このような会議は、ファシリテーターに見込み参加者がどんな人達なのか、どんな資源がどの位あるのかといったワークショップの立ち上げに必要な情報を提供するものともなります。
サウンドサークルは、声と音とパフォーマンスの創造的な活動を通じて人々の集いと絆を作り上げていくことを目的とします。一人一人がサウンドサークルを通じてグループや創造的な活動に自信を持つようになり、強い絆と信頼感を育ていくのです。
安定した参加者を持つことは次の段階への構想を練ったり、自分達の望むような機会を計画し、それを実現していくのに大切な要素となります。
歌う声がどうのってことじゃないんです。音なんです。音の輪なんです。体から音を、どんなやり方でもいいから解き放ってあげるんです。そうすると、「歌わなくちゃいけない」って、神経質にならなくてもいいんです。
レイチェル・ウォルシュ(参加者)
プレッシャーがなくなるんです。一番になってやろうって、競争するんじゃなくて、自分自身を探求するってことがとても大切なんです。
ステイシー(参加者)
ワークショップの期間中、ファシリテーターと主催者は個人や小グループを彼らが特に強い関心を示した分野やアクティビティーにつなげて行くこともできます。このようなつながりは将来のパートナー関係やサウンドサークルの発展に向けた基盤となっていくでしょう。
サウンドサークルに必要なもの・こと
(Essential Requirement for Sound Circles)
1.
主催者とコーディネーター
2.
ファシリテーター
3.
適切な会場
4.
ワークショップのための資源
5.
グループ
6.
地域文化開発計画(The
Community Cultural Development Process)
1.主催者(個人または組織・団体)とコーディネーター
(Host organisation and co-ordinator)
サウンドサークルには、資金や物流を取りまとめてくれる理解ある主催者が必要です。主催者は、会場を持っていたり、見込み参加者となるような顧客や、プロジェクトを支えていく責任者となるようなコーディネーターを抱えていることもあります。又、各々の組織は、芸術、教育、雇用、訓練、障害者サービスといった特定の組織目標を持っていることでしょう。ですから、サウンドサークルの擁護者としての主催者は、それぞれの要望に合った望ましい成果を挙げられるサウンドサークルを組織していくべきなのです。
主催者には、見込み市場の調査、参加見込み者に販促を行うといった市場開拓能力が求められます。更には、資金面も統括していかなくてはいけません。これによって、立ち上がり当初、ファシリテーターと参加者は資金面での役割を果たす必要がなくなるわけです。
プロジェクトのコーディネーターはその組織に雇われている人、もしくは当該プロジェクトの専従者となります。ファシリテーターが、プロジェクトを運営でき、地域文化開発計画を充分に把握していれば、コーディネーターを兼任してもよいでしょう。又、主催者が企業体として正式な組織を持たない場合には、財務上の知識を持ったコーディネーターが求められるといったケースもあるわけです。主催者、又はコーディネーターは助成金の申請、後援者の獲得、プロジェクトに必要な資源を考慮した提案作りといったことに長けていなくてはなりません。
どのように予算組みをし、日程を組んでいくか、資金を準備するかといったこと以外にもコーディネーターはサウンドサークルの本質を理解し、ファシリテーター、グループ、主催者、そして協働組織との調整や話し合いを通じて平等と社会正義の原則を守り、民主的に運営していける人でなくてはいけません。更には、自分たちの手に入れられる資源を明確に把握することで、ファシリテーターやグループが現実的な枠組みの範囲内で物事を選択していけるようにするのもコーディネーターの役割といえます。資金、資源の調達もコーディネーターの役割ですが、これにあたっては、常にグループのニーズと興味を第一に考えていかなくてはいけません。
このツールキットに出てくるサウンドサークルの主催者はさまざまです。サウンドサークルの母体となったブリスベンのアクセスアーツはオーストラリアのクイーンズランド州で、障害を持つ人々や社会的に恵まれない人達の「芸術面で自己開発したい」という願いに応える組織の頂点に20年以上立ってきています。その経験にふさわしく、この組織は運営と促進に経験を積んだ人材、サウンドサークルにぜひ参加したいというたくさんの会員、定期的な活動やプログラム、そして、会場や他の資材への便も持っています。
ナンボアのグループは資金面での主催者であるIntegrated Family and Youth Serviceと会場を持っているartSynCに支援されています。双方とも地域社会を豊かにする活動を熱心に支援しています。アーツインクの組織目標は地元の芸術家たちのビジネスを支援することで、この意味では、プロジェクトを運営するファシリテーターともいえます。
カブルチャーの主催者はCENTACAREで、障害のある人々の雇用と訓練を行っています。センタケアはTAFE*のコースを主催しています。サウンドサークルがパフォーマンスアートの単位の中で効果的な教材になるのではと目をつけたのはTAFEの美術教師でした。ここでは、このファシリテーター(教師)がサウンドサークルにグループと会場と交通の便をもたらしたといえます。
ケアンズのArt Nexusは、クイーンズランド州北部での芸術・文化活動を援助するという幅広い任務を負っています。サウンドサークルのプロジェクトはこの組織の目的の一つである「障害を持つ人々に芸術・文化体験の機会を増やしていく」ということにぴったりと合いました。そこで、前年の障害者週間での活動を基盤としてサウンドサークルを作り上げていきました。また、この組織は運営と市場開拓に長けているので、その広大なネットワークを通じてファシリテーターを見出すこともできました。
*TAFE:日本の専門学校にあたる公立の職能教育組織
2.ファシリテーター
(the Facilitator)
サウンドサークルの中で、ファシリテーターは声楽、音楽、又はパフォーマンスのいずれかの領域で訓練を受けた人でなくてはいけません。同時に、集団や同僚のファシリテーターとCCDアプローチで働けるということも大切です。
ファシリテーターはワークショップの中で最善の決断を下すために、メンバーのニーズ、エネルギー、興味を常に読み取れなくてはいけません。グループからの反応は当該の課題を変えたほうがいいのか、もっと徹底して掘り下げたほうがいいのか、より複雑な方向に向かうのか、もしくは、まったく違ったテーマにしていくのかといったことを判断する上での指針となります。反応をしっかりと読んでいくことで、ファシリテーターは参加者が各々のアクティビティーを、これなら挑戦できると自信を持っていられるようなレベルに保っていけるのです。
私が考えるサウンドサークルというのは、人々がともに体験したことをダムに少しずつ貯めていく、というようなものです。そこには人々の体験、-自分が持っている能力を認められて、寄与できる。その能力がグループの活動を通じてもっと育っていく。そして、他の参加者が持ち寄ってくる又違った才能に対面していく・・・そんな共有体験が貯まっていくダムなんです。だれもが、全体を豊かにするために貢献できる、こんな風だと思うわ。
アン・バーミンガム(ファシリテーター)
ファシリテーターの仕事は一人一人の中に「貢献できるもの」を見出し、評価し、明確にし、形作っていくことなのです。これはやむことのない挑戦ですが、とてもやりがいのある役割です。ファシリテーターは常に公平で透明性を持っていなくてはいけません。何故特定のアクティビティーをするのか、その方法、又、何故グループの特定のメンバーに違ったことをさせるのか、といったことも常に皆に明らかにしていかなければなりません。グループ内に意見の不一致があるときには仲裁役をし、又、他のメンバーの意見にいやいや従ってさえも、よい結果が出せるのだということを示す手本とならなくてはいけません。
ブリスベンのアクセスアーツがサウンドサークルの創立に携わっていた時のことです。彼らはこのような仕事の仕方に慣れていないファシリテーター達が技術を習得できるような支援活動を創立の活動そのものに組み込んでいったのです。フランキー・アームストロング(Frankie Armstrong)が将来のファシリテーターを啓発するための導入部を指導、サウンドサークルが進展するに従って、フランキーと仕事で長い間つながりのあったアン・バーミンガムが指導者としての役割を引き継いでいきました。アンは障害のある人々と働いた経験、そして、地域コーラスのファシリテーターの経験といった強みを持っていました。この強みはリア・デニス(Rea
Dennis) のPhysical Theatre での技能とヤーニ(Yani)の歌唱力によって更に強められていきました。カブルチャーとナンボアのファシリテーターはアンとリアと一緒にグループをまとめ上げて行った経験から多くを学んだようです。
ナンボアのテリー・アン・ディレーニー(Terri-Ann Delaney)は地元の障害を持つ人々の劇団のファシリテーターを長く勤めていました。彼女はこの18ヶ月というもの即興の持つ楽しみを発見するという「声の旅路」についています。彼女はこの旅は人々と分かち合えるものなんだ、と気が付き、今ではたくさんの人々が一緒に「声の旅路」についています。マジェラ・ジェイコブソン(Majella
Jacobson)は音楽教育とセラピーでの長年の経験を携えて、ナンボアの共同ファシリテーターになりました。
ケアンズのサウンドサークルのファシリテーターであるジル・ブラックマン(Jill Blackman)は、歌、作詞、調声ができ、又、障害者セクターや地元の音楽シーンにもとても興味を持っています。アート・ネクサスのサウンドサークルの共同コーディネーター、メリッサ・ロバートソン(Melissa
Robertson)は、音楽と地元劇団での背景を生かして共同ファシリテーターになりました。
カブルチャーのサウンドサークルのファシリテーターであるダイ・コリアー(Di Collier)は多方面にわたるアート、特にインスタレーションを含む視覚芸術での経歴を持つだけでなく、CCDアプローチと障害者セクターでの長い経験を持っています。今、彼女は声と音という分野に新たに挑戦しています。
ブリスベンではアクセスアーツのサウンドサークルの手綱はエマ・ベニソン(Emma Bennison)とピーター・ヴァンス(Peter
Vance)に引き渡されました。二人とも音楽家であり、アクセスアーツのメンバーであり、サウンドサークルに参加したことがあります。そして、偶々二人とも視覚障害を持っています。ですから、二人が周囲の音の配置を感じ取っている間、参加者と助手は音に頼らないフィードバックを与えることで彼らの手助けをしています。
私はピーターとエマと一緒に働くのが大好きですが、その理由の一つは、二人がこのツーキットのプロジェクトを自分たちへの挑戦であると同時に支援だとも考えてくれるからなんです。キット作りをしながら二人はその成果をすぐさまグループとの作業で使ってみるんですよ。ピーターにいわせると、「試運転してみてるんだ。プロセスがはっきりした時に、それを意識して使ってみる。それで、それが本当に続けていけるものなのか、『皆に開かれた、透明性のあるもの』というすごくいい感じで上手く納まっていくのか、それを試してみてるわけなんだ。」だそうです。本当に心を打たれます。
アン・バーミンガム(ファシリテーター)
比較的新入りのファシリテーターは、新しく身に着けたばかりの技術で人前に立つという傷つきやすい立場に身を置く怖さや、新しいグループに道を示していかなくてはいけない怖さにもかかわらず、経験を積んだファシリテーターと一緒に働く中で、彼らの心配りに大いに感銘を受け、又、自分たちの知識に確信を持ち、前進しようというやる気が出た、と皆、口を揃えて言っています。
3.適切な会場
(Suitable venue)
会場選びには、交通の便、入り口、飲食施設、洗面所等を考慮しなくてはいけません。又、会場内のステージを使用したい場合は、全参加者がステージに立てる場合のみ使用するべきです。会場は、参加者が新しいことをするという気後れを軽減するためにも、ある程度プライバシーの保てるものでなくてはいけません。通行人や会場を同時に使用している人達が見物人になってしまうと参加者とファシリテーターの気をそらしてしまいます。ですから、グループ全体が自ら観客や臨時参加者を迎えようと決定するまでは見物人を避けるような工夫をしてください。又、このような決定は、グループがもっと人目につく場所、たとえば公園や公共施設に移動できる段階に到達しているという兆しとしても考えられます。
会場の音響は、コンサートホールとまでは言いませんが、参加者が自分たちの作り出している音をよく鑑賞できる程度には良くなくてはいけません。ワークショップの時間帯に交通や工事、他の会場の音が邪魔にならないかどうか調べておく、又、逆にサウンドサークルが近隣の思わぬ騒音にならぬよう、あらかじめ通達しておくといった心配りも大切です。
4.ワークショップのための資源(資金・資産・人材)(Workshop
Resources)
- 一般的にサウンドサークルのようなプロジェクトを運営、実行していくのは、ほとんどがプロのアーティストです。彼らは相応の支払いを受け取るべきです。
- 飲食を共にすることはグループの絆を築くための土台となっていくでしょう。
- グループによっては、ファシリテーターや参加者の技能に応じて道具や器材、衣装、装置、又はそれらを作るための材料が必要になってくるかもしれません。
- 参加者の中には介護人や移動の便が必要な人がいるかもしれません。
- グループはグループとして成長し、技能を磨き、更には、ワークショップの成果をパフォーマンスとして完成させていくのに最低限8-12週間にわたる週毎のワークショップを持たなくてはいけません。
- 参加者、又は観客を集めるための販促物を作る必要があれば、これもプロジェクト予算に組み込んでいきます。
- 思わぬところで思わぬ人材・資材に行き当たるものです。人々と積極的に語り合い、自分たちの身の回りにいるヒト・モノを大いに活用しましょう。
ブリスベンのサウンドサークルは、一会場にピアノ、アクセツアーツに打楽器、それに加えて、アクセスアーツに隣接するパワーハウスに一連の公共パフォーマンス・スペースを持っています。
ケアンズのグループは、ファシリテーターが持っているアンプと録音器材、そして高校の音楽教師である演奏仲間を大いに活用しています。カブルチャーのグループはさまざまな鐘とドラムを持っています。とはいうものの、このような器材がなくても大いに楽しんでいるグループがたくさんあるのです。
5.グループ
(the Group)
サウンドサークルのグループには、声と音で何か新しいことをしてみたい人、創造的な活動がしてみたい人、又は、単に何か違ったことがしてみたいといったさまざまな人が集まってきます。
参加者は、当初、販促活動、主催者組織の会員、又はプロジェクトコーディネーターを通じて集まっていき、その後、口コミを通じて集まるというのが通例です。ということは、グループはある程度主催者の目的に沿った人々になるということです。ですから、障害のある人、社会的に恵まれない人たちの芸術活動を支援するアクセスアーツのサウンドサークルの参加者はアートに関心のある人、障害を持った人とその介護人、助手、そして、そのグループとそのニーズをよく知っていて、更に知ろうという意欲に満ちたファシリテーターとコーディネーターから構成されています。
音楽というものは、とかく正しいか間違っているか、成功か失敗かという風に語られがちです。すでにある作品を、じゃ、これを勉強して、練習しなさいね、と渡されて、最後には同じ作品を他人が表現したものと付き合わされるわけなんですね。皆が音楽という分野で同じような経験と自信と能力があれば、これも妥当な方法で上手く行くんでしょう。でも、サウンドサークルのグループには、こんな方法は当てはまりません。そうなったら、グループの参加者は基準に合わないということで、多くが除外されてしまうでしょうね。
アン・バーミンガム(ファシリテーター)
グループは特定の状況にあわせたものでもいいのです。教育機関が学習体験を豊かなものにするためにサウンドサークルを採り上げる、企業が変革の時にあってグループの絆と協働関係を強め、創造性を高めるためにサウンドサークルを活用するといったこともあるでしょう。
サウンドサークルはグループそれぞれの状況に合わせて展開でき、組織のニーズと、課題に向けて創造的に取り組める人々の間につながりを生み出す契機を作っていきます。
人々がグループで、例えば音を作ったり、音楽を通じて一緒になる時、音楽や音、リズムとメロディー、そしてハーモニー、それから、音の肌理や手法が作り出す構造物というのは、人がどんな風に生きられるのかということのすばらしい型見本のようです。いいえ、それ以上だわ・・・ワークショップに現れ出た極小宇宙を手にしている、まるでそんな感じがするんです。
アン・バーミンガム(ファシリテーター)
グループがどのようにして集まったか、ということに関わらず個々人はその人それぞれの才能、抱負、背景を持っています。ファシリテーターは仕事をしていく上で、この多様さの全てに目を配っていかなくてはなりません。というのも、このことこそが参加している全員にとって最大の成果を挙げていくための鍵になるからなのです。グループの成員の多様さが、反応の多様さを生み、メンバー同士が教えあい、助け合う元となるのです。
サウンドサークルは、自分の創造的な表現を人と分かち合い、又、それが人から認められ、支援されていく。そんな機会を皆に与えてくれます。皆と分かち合っていくことで、音や動きや物語や作詞といった体験が、グループの心踊る旅路を作り出していくんです。そして、個人とグループという二つのレベルで、いろいろなアートの形や、形と音がどんな風に関わってるのか、探っていけるようになるんです。こんな風にして、グループの中の一人一人の本当の価値というものが受け入れられていくんですよ。
マジェラ・ジェイコブソン(ファシリテーター)
6.地域文化開発計画
(the Community Cultural Development Process)
地域文化開発はグループの参加者が推し進め、ファシリテーターがそれを支援していくことで実現されていきます。サウンドサークルの中では次にあげたような方策を用いています。
サウンドサークルの戦略(リスト、冒頭部分より)
Ø
幅広い創造的な声と音とパフォーマンスのアクティビティを提供する。
Ø
上手くいったことは、すぐさま、そして、頻繁に相手に伝える。
Ø
グループからの意見を聞く。
Ø
参加者からの意見を考慮してアクティビティを修正する。
Ø
小グループでのアクティビティを、人々に息をつかせ、自己表現し、リーダーになる機会を増やすために使っていく。
Ø
参加者全員の興味、能力をできるだけ組み込んでいくよう努める。
Ø
個々人の能力、興味、ニーズに応じたアクティビティをデザインする。
Ø
集団としての成果を挙げるために個々人の表現力を育てる。
Ø
グループの仲間と、アイデアを分かち合うことの大切さを知らせる。
Ø
柔軟な学習体験を提供していく。参加者からの提案を受け入れるにあたっても、柔軟に。
Ø
以前のアクティビティとの関連を明らかにするために、アクティビティにちょっとした挑戦や新しいことを組み込んでいく。
Ø
参加者と主催者の絆を強めるために双方の貢献を常に知らせていく。
Ø
参加者にリーダーの役割をできるだけ頻繁に与えていく。
Ø
集まりのはじめに、会合の性格、目的をはっきりと伝える。又、グループがこれを理解していることを確認する。
Ø
音作りのために、幅広い材料を使っていく。
立ち上がり当初は、グループの期待に応えているのかどうか確かめたくて、グループから意見を引き出すことにずいぶん時間を割いたものです。それから、こんなに時間を費やすのは無駄だと気が付いたんです。グループにとっても心地いいものではなかったということにも気が付きました。今では、誰か自分の見方や意見を皆の前で言いたいかどうか聞くか、それより、音のアクティビティを通じて意見を出していく機会を作ることのほうが多くなりました。例えば、小グループで歌詞を書いたり、お気に入りのサウンドサークルの思い出で音を作ったりします。この方が、グループにとって面白いだけでなく,あまり自信のない人にも意見を言う機会になるからなんです。
エマ・ベニソン(ファシリテーター)
このリストを一読しただけでも、一見明快そうに見える地域文化開発が一筋縄ではいかないということがお分かりになるでしょう。しかし、文化の民主主義、自決主義、アートと文化での共同製作、社会正義といった原則論を実際に動かしていくのが『実践』なのです。(www.ccd.net
参照)
以下の引用は、これらの原則をより公式に著したものです。
·
地域文化開発の根本的な目標は,文化的な生活への積極的な参与である。
·
全ての文化は、本質的に平等であり、ある社会は、一つの文化を他よりも優れたものとして推すべきではない。
·
多様性は社会の資産であり、世界規模の文化連邦の一部をなす。それは、保護され、養われていかなくてはならない。
·
文化は社会変化の効果的な坩堝である。これは、他の社会分野での変化に比べ、対立が少なく、しかもより深いつながりを作り出しえるものである。
·
文化的表現は,解放のための手段の一つである。表現自身は最終目標たりえない。その過程がその作品同様重要なのである。
·
文化とは、流動的且つ変幻自在の統一体である。人の手による境界は何の価値も持たない。芸術家には、変化の代理人としての役割がある。これは、主流芸術界での役割よりも社会的に遥かに価値があり、正統性においても等しいことは確かである。
Adams D & Goldbard, 2002, A Creative Community- The
Art of Cultural Development. Rockfeller
Foundation, NY.
この手法の鍵の一つは『尊重する』ことにあります。関係者は全員、お互いに尊重しあわなければならない、ということを最初から徹底していってください。お互いを尊重すること、これは、グループで、未知の領域に船出し、ともに働き、話し合い、リーダーシップを発揮するための安全で信頼できる環境を築くために本当に重要なことなのです。
カブルチャーのグループは、日本の愛知万博に2人の代表を選ぶことになりました。そこで、代表として選ばれることの意味、どうしてたった2人しか行けないのか、そして、投票の方法などを参加者がきっちりと理解できるよう、全過程を作業工程として、綿密に作り上げていったんです。グループは日本に行きたいと名乗り出た人の中から無記名投票で代表を選ぶという方法を採用しました。ですからファシリテーターは、その人たちの写真のついた投票用紙を作り、グループは投票方法を習ったんです。グループの参加者だけが投票しました。第一回投票では、3人に同票が集まったので、第二回投票が、その3人の間で行われました。この一連の過程から、グループはとても大切なことを学びましたし、その結果も喜んで受け入れました。
ダイ・コリアー(ファシリテーター)
『尊重』が活きていると、間違いや誤解を解くのがやさしくなります。それらが、より強い絆、信頼、協力関係を生み出す役目さえ果たせるのです。絆が強くなればなる程、土台はしっかりしてきます。その土台があってこそ、個人やグループは創造性の領域で危ない橋を渡ることもできるのです。
どんなグループも均一であることは期待できません。ワークショップで出されるアクティビティはグループの人達が以前にはしてみようとさえ思わなかったようなものでしょうし、自分の専門の分野とは違う畑で自分を曝け出すように言われたこともないでしょう。ですからファシリテーターとメンバー全員が他のメンバーからの反応を故あるものとして受け止めていくことは本当に大切なことなのです。
サウンドサークルのアクティビティ
(Sound Circle Activities)
その名の通り、サウンドサークルは輪になって始まることがよくあります。輪は、成員の間で視覚、聴覚に伝わる情報、そして各々が占める場を平等にしやすいのです。歌い手であれ、助手、ファシリテーター、介護人であれ、、最初は皆と同じ立場に立つのです。輪はこのように、どんな提案も他同様に扱い、どれも特別扱いしないという目的を強化するものでもあります。
私にとって、サウンドサークルの核になるものの一つは、作品を作り上げる方法と同時にお互いがつながりあう方法としての「共同創造」にサウンドサークルが焦点をあわせているということです。
アン・バーミンガム(ファシリテーター)
サウンドバス(音のお風呂)、コール・アンド・エコー(こだまと声)、コール・アンド・レスポンス(呼べば応える)といったアクティビティを基にいくつか大変応用の利くアクティビティがあります。サウンドスケープ(音の風景)と詞は、日々の出来事やいろんな環境といった様々なインスピレーションから生まれ育っていきます。アクティビティはグループの反応、目的、興味、そしてファシリテーターの技能に応じて様々な方向に発展していきます。
コール・アンド・レスポンス(呼べば応える)のバリエーションなんですが、まず一人にグループをリードさせます。そのリーダーが形を作ったり、動作をして、残りのメンバーがそれに音で応えていくというものなんです。リーダーは音の変化、テンポ、音質といったものに自分が影響を与えているという経験をします。
ある人にとってこれは、音楽にあわせて踊るのにも似ているでしょう、又ある人にとってはもっと意図的に音を作り出そう、形作ろうというものになるでしょう。いずれにせよ、単に何かに反応するだけでなく、音を作り出すという経験をするわけなんです。
アン・バーミンガム(ファシリテーター)
アクティビティは、それが言葉で語られるかどうかは別としても、『物語』として提示していくこともできます。グループが、各々の生き方を音を通じて探求していくにつれて、たくさんの物語が現れ、語られ、分かち合われていくでしょう。この過程には、分かち合うこと、物まね、響き合い、挑戦、隙間埋め、ハーモニー、ダンスなどが含まれます。グループからの反応が出てくるにつれて、新しい音、構成、動作が出てくるでしょう。
いくつかの思い出深い例として・・・
·
混雑した町の交差点で交通を止め静まり返らせる
·
マランダの滝で地域の願い事を作り出す
·
展覧会のオープニングでアーティストとその作品を祝福する
·
ブリスベン川の水がニュӦ